食育

食育をする人が機能性野菜について知っておくべきこと

ケルセチン豊富な機能性タマネギ、スルフォラファン豊富な機能性ブロッコリー、リコピンを高濃度に含む機能性トマト、ベータクリプトキサンチンの多い温州ミカン、GABAを豊富に含んだ米…。

これらは見た目はごくふつうの野菜や果物、米に見えますが、機能性成分をを高めた「機能性野菜」「機能性果物」「機能性米」です。

2015年の4月から新しく「機能性表示食品」の制度が施行されましたが、この制度は、野菜、果物、穀物などにも機能性の表示を解禁するものです。

この制度により、
「機能性という付加価値のついた野菜」
が次々と生み出されることになります。

つまり、農業の姿が変わります。

農業の姿が変わるということは、食育に関わっている人にとっても、関わり方が変わることを意味します。

ここでは、食育に関わっている人が、機能性野菜について知っておくべきことを解説します。

機能性表示の広がり

三ヶ日町農業協同組合が出荷している三ケ日ミカン(温州ミカン)の場合、

「本品には、ベータクリプトキサンチンが含まれています。ベータクリプトキサンチンは骨代謝のはたらきを助けることにより、骨の健康に役立つことが報告されています」

という情報を表示して販売してもよいことになっています。

2015年4月から解禁された「食品の機能性表示制度」が、農産物についても、こうした「効能効果の表示(ヘルスクレームといいます)」を可能にしました。

これまでのトクホ(特定保健用食品)の制度では、主にサプリメントなどの加工食品や一部の飲料ばかりが効能効果の表示をしており、野菜や果物、穀物などは蚊帳の外でした。

しかし今回の新しい機能性表示の制度のもとでは、効能効果の表示ができる対象が食品全体に広がり、農産物や水産物などの生鮮食品も対象になっています。

1. 食品の機能性とは?

食品が人間に与える影響を「食の機能」と呼びます。

主に、

  •  1次機能
  •  2次機能
  •  3次機能

の3種類あるとされています。

1-1. 食の1次機能

「生きるためには、食べて栄養を摂(と)らなければいけない」という意味の機能です。

栄養的機能、とも言います。

機能のもととなるのは、タンパク質、脂質、炭水化物、および、ビタミン、ミネラル(以上を「5大栄養素」と言います)。

これらは、不足すると健康を損ない、最悪、命を失います。

1-2. 食の2次機能

食には「味覚を刺激」し「楽しさを提供」する側面がある、という意味の機能です。

つまり、「食べて美味しい」ということですね。

人は本来、「美味しいから」食べるのであり、「栄養を摂る必要があるから」食べるわけではありません。

こうした「美味しいから食べる」という食の役割を、「食の2次機能」と呼びます。

1-3. 食の3次機能

「生体調節機能(体調を良くする機能)」とも言い、「機能性表示」はこの「食の3次機能」を表示するものです。

1980年代なかばに、文部省(当時)が実施した研究「食品機能の系統的解析と展開」において、食に「1次機能」、「2次機能」、「3次機能」があることが提唱されましたが、同時に、この研究により、前述の「5大栄養素」以外にも、食品に含まれるさまざまな成分が生体調節機能を持つことが明らかにされました。

以後、こうした成分を強化した食品が、「機能性食品」と呼ばれることになります。

しかし、かつては「機能性食品」であっても、トクホ(特定保健用食品)としての許可を得なければ、効能効果を表示できませんでした。

たとえば温州ミカンのベータクリプトキサンチンが骨代謝のはたらきを助けることが分かっていても、それを謳うことができなかったのです。

この状態を変えたのが第2次安部内閣による規制改革の動きです。

  •  国民が自らの健康を守ることができるように、機能性食品の情報が的確に提供されるようにしよう
  •  機能性野菜・機能性果物・機能性米などがどんどん誕生する環境を整え、農産物の海外輸出を活性化しよう

という目的で、2015年4月に「食品の機能性表示」が解禁されました。

農産物が機能性表示の対象になっているのは、世界のなかでも日本が初めてです。

2. 機能性成分とは

機能性成分とは、一般に、「5大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物、および、ビタミン、ミネラル)」以外の「人間の役に立つとされる成分」のことを指します。

どんなものがあるかですが、機能性成分は1万種類以上あると言われているため、すべて列挙することは到底できません。

ここでは代表的なものを記載します。

なお、「5大栄養素」の一部でありながら、機能性成分のように扱われているものもあります。

2-1. 主な機能性成分

まずは、機能性成分にはどんなものがあるかを見てみましょう。

1万種以上あると言われていますが、代表的なものを挙げておきます。

「ポリフェノール」に属するもの

(例)

  •  緑茶などに含まれるカテキン
  •  タマネギなどに含まれるケルセチン
  •  ナスやブドウなどに含まれるアントシアニン
  •  大豆などに含まれるイソフラボン

「カロテノイド」に属するもの

(例)

  •  ニンジン等に含まれるベータカロテン
  •  トマトなどに含まれるリコピン
  •  温州ミカンなどに含まれるベータクリプトキサンチン
  •  カニなどに含まれるアスタキサンチン
  •  ケールなどに含まれるルテイン

「食物繊維」に属するもの

(例)

  •  シイタケなどに含まれるベータグルカン
  •  果物などに多く含まれるペクチン
  •  コンニャクなどに含まれるグルコマンナン
  •  ゴボウなどに含まれるイヌリン

「5大栄養素」の一部でありながら、機能性成分のように扱われているもの

(例)

  •  トリプトファン、GABAといった、脳内の神経伝達物質の役割も果たすアミノ酸(アミノ酸はタンパク質の構成要素です)
  •  オリーブオイルなどに含まれるオレイン酸(脂質)
  •  魚などに含まれるEPAやDHA(脂質)
  •  カキなどに含まれる亜鉛(ミネラル)

その他

(例)

  •  ニンニクなどに含まれる硫化アリル
  •  トウガラシなどに含まれるカプサイシン
  •  カンキツなどに含まれるクエン酸

2-2. 機能性成分の効能効果

機能性成分にはいろいろなものがある、ということが分かったところで、次は
「どんな機能性成分に、どんな健康効果があるのか」
について解説します。

ただし、実はこれには、

  •  「○○に効く」と言われているが、じつはまだ証明されていないもの
  •  健康効果が証明されているもの

という区別があり、これを分けて考える必要があります。

「○○に効く」と言われているが、じつはまだ証明されていないもの

たとえば、このところ「ウコン」に含まれる「クルクミン」という機能性成分が注目されており、世間では、
「クルクミンは肝臓によい」
と言われていますが、じつはまだ証拠が不十分です(2016年7月現在)。

もっとも、証拠が不十分だからといって、「肝臓によい」が嘘だということではありません。

証拠が足りない、ということに過ぎません。

今後、研究が進めば「肝臓によい」が証明される可能性もあります。単純に「白か黒か」という二者択一をしないようにしましょう。

健康効果が証明されているもの

たとえば脂肪酸の1種である EPA(イコサペンタエン酸) は、中性脂肪を合成しにくくさせ、脂肪の燃焼を促すことが各種実験で確認されています。

成分それぞれの「効果のあるなし」の調べ方

ここまでに述べたように、機能性成分には、

  •  「○○に効く」と言われているが、じつはまだ証明されていない
  •  健康効果が証明されている

という区別があるわけですが、では、その情報を得るには、何を調べたらよいのでしょうか?

参考になるものの1つとして、以下のウェブサイトを紹介します。

「健康食品の安全性・有効性情報」
(素材情報データベース)
https://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv.html

3. 機能性野菜とは

前章では「機能性<成分>」について解説しました。

ここでは、成分ではなく食品そのもの、なかでも野菜、すなわち「機能性<野菜>」について解説します。

「機能性<野菜>」には、

  •  普段よく見かける「なじみ深い」野菜だが、機能性成分が多く含まれることが近年になって分かってきたり、新しい機能性成分が発見されたりして注目されているもの
  •  これまであまり見かけなかったが、機能性成分が多く含まれるということで話題になり、今後はスーパーマーケットでも見られるようになるだろうと思われるもの
  •  機能性成分を多く含むように特別に育成されたり、品種改良されたりしたもの

という3種類があります。

3-1. 普段よく見かける「なじみ深い」野菜だが、機能性成分が思いのほか多く含まれることが近年になって分かってきたり、新しい機能性成分が発見されたりして注目されているもの

(例)

  •  イソフラボンを含む大豆
  •  アントシアニンを含むナス
  •  スルフォラファンを含むブロッコリー

3-2. これまであまり見かけなかったが、機能性成分が多く含まれるということで話題になり、今後はスーパーマーケットでも見られるようになるだろうと思われるもの

例:ボルシチ(ロシアのスープ)の材料にも使われるビーツ。

日本ではあまり見かけません。

しかし海外では、ビーツは(含まれている硝酸塩の効果で)筋肉の血流量を増加する食材ということで、スポーツ選手に好まれています。

ビーツの鮮やかな赤が見た目にも楽しいことから、日本でも今後、生産量や輸入量が増えてくると思われます。

3-3. 機能性成分を多く含むように特別に育成されたり、品種改良されたりしたもの

たとえば、各メーカーから、以下のような野菜が育成・開発されています。

  •  ビタミンB12を添加したカイワレ
  •  ケルセチンを増量したタマネギ
  •  リコピンを高濃度に含むように育てたトマト
  •  スルフォラファンを強化したブロッコリー

など。

こうした研究開発は現在でも盛んにおこなわれていますので、これからもこうした「機能性成分の含有量を向上させた」野菜が出てくると予想されます。

4. 機能性野菜の将来

前述したように、トクホ(特定保健用食品)は主にサプリメントや加工食品の世界での話であり、農産物は「蚊帳の外」の状態でした。

その証拠に、農産物で「トクホ」は1つもありません。

したがって、農業関係者も「トクホ」とは無縁のところにいました。

いっぽう、食育をしているのは
「農業を応援する」
「自然食品やオーガニック食品を選ぶ」
といった人たちなので、この方々も、人工的なイメージのある「トクホ」に対する興味はまったくなかったと言えるでしょう。

その状態が今も続いているため、食育をしている人たちは
「機能性表示もどうせトクホの延長だろう。だったら農業とは関係がないから、自分たちも関係がない」
と誤解し、機能性野菜についても「知ろう」という気があまり起きないようです。

しかし、それは大きな認識間違いです。

機能性の知識は、食育をしている人こそ、持っておくべきです。

以下、簡単にその理由を説明します。

4-1. 農産物への回帰が始まる

機能性野菜が市場にどんどん出てくるようになると、これまでサプリメントに頼っていた人たちが、野菜に「戻る」ことが予想されています。

これは「農産物への回帰」と呼ばれ、欧米ですでに起きてる現象です。

つまり、「機能性」と「農業」は大いに関係があります。

4-2. 新しいトレンドが生まれる

「機能性」というキーワードから生まれるトレンドは、食育と深く結びついています。

理由は、以下の2つです。

消費の変化

機能性野菜の登場に影響され、以下のような消費トレンドが生まれると考えられます。

  •  スポーツ選手は、「オーガニックの機能性野菜」を好むようになるでしょう。
  •  チロシンやトリプトファンなどを含む「ブレインフード的な機能性野菜」が開発されてくるでしょう。
  •  一般の生活者も、「抗酸化力のある野菜」「免疫系に役立つ野菜」「デトックス系の機能性野菜」などを「目的別に」買い分けるようになるでしょう。

したがって、機能性食品を生活に上手に取り入れる知恵が求められるようになり、そこに食育の需要が生まれます。

農業の今後の展開

機能性野菜の開発が進めば、

  • もともと日本の農産物は世界的に評価が高い
  • 和食が世界的に注目されている
  • どの国でも健康志向が高まる

ということもあり、「機能性野菜」は海外でも求められ、日本の農産物の価値は上がっていくでしょう。

すなわち農業の海外展開が加速すると考えられます。

したがって、食育のなかでも「食による地域活性化」や「農業の6次産業化」に取り組んでいる人にとって、この動きは重要になってきます。

5. まとめ

「機能性」と「農業」は大いに関係があり、食育をしている人こそ、機能性食品について知っておくべきです。

機能性食品を理解するには、

・ 機能性成分

→ 主にどんな成分があり、どのような効果効能があるのか

・ 機能性食材(機能性野菜)

→ どんな野菜がどのような成分を含むのか

・ 機能性食品のこれからのトレンド

→ 消費はどのように変わり、農業はどのように展開していくのか

この3つを把握しておくことをお勧めします。

 

 

食育総研

吉村司 吉岡岳彦

 

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吉岡岳彦

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