食育

食育を本気でしごとにしたいなら、やってはいけないこと

「食育はしごとになるでしょうか?」という質問をよく受けます。

まず、「まだ何もやったことがない。これから」という人にとっては、

「食育のしごとを始めたいと思っているけど、何をやったらいいか分からない」というのが悩みになります。

少しでも「食育の活動をやってみたことがある」という人にとっては、

「食育の教室みたいなものを開いてみたけど、そんなに利益が残ることもなく、趣味の延長のような感じになってしまっている(楽しいから、それでもいいんだけど…)」

とか、

「ときどき食育の講師を頼まれることがあるけど、別にしごとと言えるほどのギャラがもらえるわけでもない(楽しいから、それでもいいんだけど…)」

といった悩みになります。

つまり、

「そもそも何をしていいか分からない」
「手さぐりでやってみたけど、しごとになっていない」

という漠然とした、出口の見えない悩みを抱えていることになります。

こうした悩みには、じつは共通した原因があります。とてもシンプルなのですが、意外と見過ごしている原因があるのです。

ここでは、その共通した原因とは何か、について解説します。原因が分かれば、それを解決するための次のステップが見えてきます。

1.  食育をしごとにしたい人が見過ごししがちなこと

「人はどういうときにお金を払い、どういうときに払わないのか」

これを冷静に考えることで、食育をしごとにするための必要条件が分かります。

1-1.  食育がしごとになっていない典型的なパターン

食育の活動は、本来とても楽しいものです。そんな食育の活動が、しごとになってくれたら、どんなに素敵でしょうか。

しかし実際には、

「食育がしごとになっている」

という実感を得ている人は少ないように思われます。

典型的な例として、近所の親子を集めて食育の講座を開く、という場合があります。食育の活動としてはだれもが考える、よくあるパターンです。

このとき、ほとんどの人が

「みんなに参加してもらおうと思えば、参加費(受講料)を安くしないと来てくれない。でも安い参加費では、会場費と食材費をまかなうのが精いっぱいで、利益が出ない」

といった壁にぶつかります。

例外的に、最初の1回は利益が出ることがあります。最初ということで、「ご祝儀相場」のようにみんなが参加してくれたりするのです。

しかしそんなことがあるのも最初の1回だけ。2回目からは、参加人数が大幅に落ち込むのがふつうです。結果として、「手さぐりでやってみたけど、しごとにならないなあ」とため息をつくことになります。

せっかく食育活動は人の役にも立ち、自分も楽しいのに、残念なことです。

1-2.  しごとにならないと感じてしまう、その原因

これから述べることは、わざわざ書くまでもない、とてもアタリマエのことです。しかし実際には見過ごされることが多いため、ここできちんと認識をあらたにしましょう。

そのアタリマエのこととは、

「需要があり、『お金を払ってもよい』と人が思うものは、しごとになる」
「需要がないものは、しごとにならない」

というきわめて単純な法則です。これに反対を唱える人は、まずいないでしょう。

では、

「近所の親子を集めて食育の講座を開いたけど、利益がでなかった」

というのは、

「需要がなかったから」

でしょうか?

いえ、違います。そうではありません。親子で食育を学びたい、という需要はあるのです。需要があるのに、しごとにならなかった。なぜでしょうか?

じつは食育の場合、さきほどの単純な法則に加え、もう1つ、ある特殊法則があります。

それは、

「需要があるにも関わらず、『お金を払ってもよい』と人が思わないものがある」

というものです。

その場合、しごとにはなりません。具体的にいうと、

「県庁や市役所、農水省や文科省や厚労省などが、税金でやりそうなこと」
「NPOなどがボランティアでやりそうなこと」
「学校などで行われていそうなこと」

に対しては、人はお金を払わないのです。

つまり、自治体や政府やボランティア団体などがやりそうなことと同じようなことをしても、人はお金を払いません。したがって、しごとになりません。

「近所の親子を集めて食育の講座を開いたけど、利益がでなかった」

というのは、まさに、自治体や政府やボランティア団体などがやりそうなことと同じようなことをしているから、お金にならないのです。

「食育を本気でしごとにしたいなら、やってはいけないこと」とは、このことです。

2.  では、食育をしごとにするには?

しごとにしたかったら、

「しごとにならないことの、逆のことをする」

のがよいですね。

つまり、県庁や市役所、農水省や文科省や厚労省、学校、あるいはボランティア団体などがやっている食育活動とはまったく違う、かけはなれたことをするとよいわけです。

そういう食育活動や食育商品を考える。そうでないと、人はお金を払わないからです。

2-1.  しごとにならないことの、逆のことをする

県庁や市役所、農水省や文科省や厚労省、学校、あるいはボランティア団体などがやっている食育活動には、こういうものがあります。

「親子料理教室」
「親子収穫体験」
「子ども向け箸教室」
「シニアむけ料理教室」
「地元の農産物に詳しくなる講座」
「食育のカルタ作りやソング作り」

こうした教室や講座については、人々は「無料があたりまえ」「安いのがあたりまえ」「税金でまかなうのがあたりまえ」と無意識に思っています。

いわば、「空気は無料」と思っているのと同じです。この意識をくつがえすのは容易ではありません。

にも関わらず、食育活動をしごとにしたい人の多くが、「なんとかして空気を有料で売ろう」というのと似たようなことをしてしまうために、苦労が絶えないのです。

「親子料理教室」
「親子収穫体験」
「子ども向け箸教室」
「シニアむけ料理教室」
「地元の農産物に詳しくなる講座」
「食育のカルタ作りやソング作り」

みたいなやり方は、このさい、すっぱり忘れてしまいましょう。あなたがやらなくても、誰かがやってくれます。

「誰かがすでにやっていることは、しない」という決意が重要です。

2-2.  では何をしたらいいのか?

そもそも、「県庁や市役所、農水省や文科省や厚労省、学校、あるいはボランティア団体などがやっている食育活動」は、ある意味「誰でも思いつく食育活動」だと言えます。

ユニークさも、独創性もありません。食育の活動に限らず、「誰でも思いつくような、平凡なこと」は、ビジネスにはなりません。

ちゃんと、自分の頭で考えましょう。

だいいち、「誰でも思いつくような、平凡なこと」が簡単にビジネスになるのであれば、世の中は成功者だらけになっていなければおかしい。

つまり、「食育はしごとにならない」とため息をついている人は、「自分の頭で考えていない」からそうなるのです。

2-3.  そうは言っても、では何をしたらいいのか?

「自分の頭で考えましょう」

と言うのは簡単ですが、実際に実行するのはそう容易ではありませんね。そこで、参考になりそうなことを2つ、紹介します。

(その1)ユニークな食育活動をしている事例を探し、ヒントにします。

何もヒントがない状態で、新しいものを発想するのは至難の業です。エジソンだって、ヒントなしでは発明もできなかったはずです。

でも人間の頭は柔軟ですから、ヒントが1つでもあれば、それを起点に発想の幅を大きく広げることができます。

つまり、積極的に「事例探し」をしましょう。

新聞やネットのニュース記事で、食育のユニークな事例が紹介される場合があります。そんな記事を発見したら、大いに参考にしてください。

(その2)海外の情報を仕入れます。

「食育」は日本だけのものではありません。

アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ…、先進国のほとんどで、食育は行われています。

そうした海外諸国で、ユニークな食育活動の成功例がないか、探してみるのです。言葉の違いはありますが、これも海外の新聞やネットの記事で、食育のユニークな事例を知ることが可能です。

そういう事例が首尾よくみつかったら、今度はそれを日本でできないか、考えてみましょう。

3.  まとめ

食育がしごとにならない、という考えはじつは間違いです。

「しごとにならないやりかたで食育をしているから、しごとにならない」のです。

「県庁や市役所、農水省や文科省や厚労省、学校、あるいはボランティア団体などがやっている食育活動」
とはきっぱり別れを告げ、新しい情報を積極的い仕入れ、しごとになる、ユニークな食育の仕事を築きあげましょう。

 

食育総研
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吉岡岳彦

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