農業は、野菜や果物などの農作物を育てて、それを私たち消費者に販売して生計を立てる仕事です。したがい、農業をするには、農作物を上手に育てなければなりません。
農作物を健康に育てていくためには、肥料が必要になります。肥料は数多くの種類があります。大きく分けて、「有機肥料」と「化学肥料」になります。
ここでは、有機肥料と化学肥料の違いやそれぞれの特徴を紹介します。
1. 肥料とは
肥料とは、植物が育つために必要な栄養素を補う物質のことです。特に、窒素、リン酸、カリウムは、3大要素です。生育するために欠かせない栄養素です。
1-1. 窒素(N)の役割
窒素は、葉や茎の素になる葉緑素になる栄養素です。
油かす、魚かす、尿素、硫酸アンモニアなどが、主な肥料です。
1-2. リン酸(P)の役割
花や果実の生長を促す栄養素です。
骨粉、米ぬか、過リン酸石灰などが、主な肥料です。
1-3. カリウム(K)の役割
根や茎を丈夫にして、球根を太らせます。
草木灰、苦土石灰、塩化カリウム、硫酸カリウムなどが、主な肥料です。
2. 肥料の種類
肥料は人間の生活で例えならば、食事の役割を果たします。
人間は食事を摂らなければ、栄養不足で病気になってしまいます。同様に、植物は肥料が与えられなければ、養分が不足とになり、病気や害虫に侵されやすくなります。肥料は植物にとって、なくてはならないものです。
ちなみに、人間の栄養の摂り過ぎは、かえって病気の原因になります。同様に、植物に肥料を与え過ぎても、かえって生育不良になってしまいます。
2-1. 肥料の種類数
肥料の種類は、190種類です。
2-2. 肥料の種類名
窒素質肥料(23種類):
硫酸アンモニウム、尿素、石灰窒素 など
リン酸質肥料(13種類):
過リン酸石灰、よう成リン肥、重過リン酸石灰 など
カリ質肥料(13種類):
塩化カリウム、硫酸カリウム など
有機質肥料(42種類) :
ナタネ油かす、ダイズ油かす、魚かす粉末 など
複合肥料(9種類):
化成肥料、配合肥料、家庭園芸用複合肥料 など
石灰質肥料(6種類):
生石灰、消石灰、炭酸カルシウム肥料 など
ケイ酸質肥料(5種類) :
鉱さいケイ酸質肥料、軽量気泡コンクリート粉末肥料 など
苦土肥料(10種類):
硫酸苦土肥料、水酸化苦土肥料 など
マンガン質肥料(7種類):
硫酸マンガン肥料、炭酸マンガン肥料 など
ホウ素質肥料(4種類):
ホウ酸塩肥料、ほう酸肥料 など
微量要素複合肥(3種類);
よう成微量要素複合肥料 など
汚泥肥料(8種類) :
下水汚泥肥料、工業汚泥肥料 など
指定配合肥料(1種類):
指定配合肥料
特殊肥料(46種類) :
たい肥、米ぬか、魚かす など
3. 有機肥料と化学肥料は違い
肥料は「有機肥料」と「化学肥料」に分かれます。有機肥料と化学肥料は、それぞれ作り方や成分がまったく異なります。それぞれの肥料について詳しく知っておくことは、農業を営む上で、とても大切なことです。植物を元気に育てるために役立てください。
ここでは、有機肥料と化学肥料にはどのような違いがあるのか詳しくみていきましょう。
3-1. 有機肥料と化学肥料の4つの違い
有機肥料と化学肥料の違いを表す4つのポイントをご紹介しましょう。
3-1-1. 原料が違う
有機肥料と化学肥料は作り方が違います。
有機肥料は、有機物が主な原料になります。たい肥や米ぬか、家畜の糞等を発酵・熟成させて作られるのが、有機肥料になります。有機肥料は、100%自然素材の肥料になります。
肥料ができるまでには、少し時間がかかります。
化成肥料は、無機質の原料を化学的に合成して作られます。
作るのが簡単なので、現在使われている肥料の多くは、化学肥料だと言われています。
3-1-2. 価格が違う
有機肥料と化学肥料では、価格が違います。
化学肥料は、価格が安く、手軽に購入することができます。
3-1-3. 生産量が違う
化学肥料は化学合成で作られるため、大量生産が可能です。
それとは対照的に、有機肥料は自然の素材を発酵させて作ります。生産量には限りがあります。そのため、有機肥料は化学肥料よりも高くなります。
3-1-4. 効き目が違う
有機肥料と化学肥料は、植物に対する効き目も違います。
有機肥料は、速攻性はありません。有機肥料は土の中でゆっくり微生物に分解されて、植物の栄養に変換されるので、効果が出はじめるのに多少時間がかかります。ジワジワと身体に効いてくる漢方に似ています。
有機肥料は化学物質を使っていないため、身体に優しい野菜や果物を作ることができます。
化学肥料は、植物が必要とする栄養を化学合成で作り出します。
したがって、植物が吸収しやす苦なります。即効性ある薬に似ています。
4. 有機肥料と化学肥料を混ぜて使う
有機肥料は、自然素材で栄養も豊富です。けれども、化学肥料に比べると効き目が遅くなります。したがって、農作物の生成の時よりも、農作物を植える前の土壌生成や改良の時に使われることが多い肥料になります。
有機肥料と化学肥料には、こういったそれぞれの長所や短所があります。そのため、有機肥料と化学肥料は混ぜて使うのがポイントになります。
4-1. 有機肥料の特徴
有機肥料の長所と短所を確認しましょう。
4-1-1. 有機肥料の長所
・ ゆっくり効果があらわれる
・ 肥料としての効果が長く続く
・ じわじわ効くので、野菜もゆっくり健全に生長する
・ 土壌中の微生物の種類が増える
・ 土の緩衝力が高まる
4-1-2. 有機肥料の短所
・ 肥料としての効果が弱い
・ 効き目が遅い
・ 土壌微生物に分解される過程でガスや熱が出る
・ 作付けまでに、2週間ほど必要
・ 成分量がはっきりしていない
・ 価格が高い
4-2. 化学肥料の特徴
化学肥料の長所と短所を確認しましょう。
4-2-1. 化学肥料の長所
・ 効き目が早い
・ 成分量が明確
・ 施肥量の調節が容易
・ 施肥の労力が少ない
4-2-2. 化学肥料の短所
・ 土壌に悪影響を与える
・ 過剰施肥で、肥やけを起こしやすい
・ 土壌改良に役立たない
・ 土壌の有機物が減り、土の緩衝力がなくなる
4-3. より効率よく生成する
より効率よく農作物を育てるためには、有機肥料と化学肥料を混ぜ合わせて使うことが推奨されています。
このようにすることによって、良い土の状態を長く維持することができます。
5. まとめ
農作物を健康に生長させるためには、肥料が必要になります。
肥料には190の種類がありますが、大きく分けると、「有機肥料」と「化学肥料」に分類できます。有機肥料は、自然素材の肥料です。化学肥料は化学合成の肥料です。それぞれに長所と短所があります。長所を活かし、短所を補う形で、混ぜて使うといいでしょう。
肥料は人間で例えならば、食事の役割を果たします。食事を摂らなければ、栄養不足で病気になります。植物は肥料が与えられなければ、病気や害虫に侵されやすくなります。逆に、肥料の与え過ぎは、生育不良になってしまいますので、ご注意ください。
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